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菅創吉作品

各作品の解説は、南砺市広報『広報なんと』内「南砺市の文化財と美術品のご紹介」というコーナーで当館学芸員が執筆したものです。(2020.4月号で当コーナーは終了しています。)


作品名 魚洞
作者名 菅創吉
制作年

1958(昭和33)

材質/技法 油絵・和紙
規格 55cm×47cm

『広報なんと2019年12月号』掲載

福野文化創造センターには菅創吉の作品が285点収蔵されています。様々な素材を使い、油彩や立体作品などを通してその東洋性とユーモアあふれる表現が印象的です。

「魚洞」は和紙を水に浸し、どろどろに溶かしたものをまた固めた上から油彩で描いています。魚や身近なものをモチーフに童心さをイメージした作品は、子供たちの手の感触にも伝わるようにと表現しています。

この作品は来年1月17()26()に当館にて開催するヘリオス収蔵品展シリーズ「菅創吉と和紙アートを楽しむ展覧会」にて展示します。描かれているものだけではなく、作品に使われている材料にも新たな発見がある菅の作品。是非会場で実際にみて、素材の柔らかさを体感してください。


作品名 メキシコ・中国 デッサン集
作者名 菅創吉
制作年

メキシコ:1968(昭和43)年

中国:1938-1944(昭和13-19)

材質/技法 デッサン
規格

『広報なんと2019年9月号』掲載

福野文化創造センターには菅創吉の作品が285点収蔵されています。様々な素材を使ったユーモアあふれる抽象画が印象的ですが、収蔵品の中には菅氏がメキシコや中国を訪れた際に残したデッサン集もあります。

デッサンに描かれているのは建物や、街並み、遺跡の模様、オブジェなど様々ですが、いずれも菅氏の抽象作品を思わせる着眼点で描かれています。例えば、ポツンと立つ風車や博物館で見つけたであろう発掘品の模様のデッサンは、そのまま菅作品に登場しそうな、優しさと懐かしさを感じさせるフォルムで書き留められています。また、少しクセのある字で書かれたメモを見ることが出来るのもデッサンという形ならではの面白さです。

現在、福野文化創造センター別館・喜知屋の回廊にてそのデッサンの一部をご覧いただけます。菅氏の目に映った景色の数々を是非お楽しみください。


作品名
作者名 菅創吉
制作年

1977(昭和52)年

材質/技法

布・ステンレス・鉄

規格 59cm×36cm

『広報なんと2019年6月号』掲載

転がっているスクラップ(散歩の途中に拾い集めてきた鉄の片や針金、木片、石ころ、何かの部品など)が、作者の手によって命が吹き込まれ、作品となって私たちと対面します。今回紹介するは板に緑色の布を張り、ストーブの棒網、そして鉄の欠片で作られた様々な廃品を組み合わせた作品です。

菅氏は1905年姫路市に生まれ77歳でこの世を去るまで、多くの国を渡り多様な物事に触れ、作品を制作しました。生活空間の中で眼を身辺の観察に向け、ごくありふれた無機物のスクラップが持つ表情と役回りに気が付きました。絵を描くだけではなく、生活色、人間臭さを作品に重ね、新たな世界を作り出したのです。

只今、菅氏のスクラップを用いた作品をヘリオスの回廊内に展示しております。正面から、下からのぞき込んで、光を当てて影を…。多くのものが画面に詰まっており、見るたびに新たな発見があります。


作品名
作者名 菅創吉
制作年 1978(昭和)年
材質/技法 油彩・石・ステンレス
規格 26.3cm×23.3cm×1.5cm

『広報なんと2018年12月号』掲載

菅創吉の作品は知的なユ-モアに溢れた独特の抽象的な画風で深い精神性を感じることができます。≪雀≫をはじめとするオブジェ等の立体作品は、散歩の途中で拾った金属や石、鉄くずなどの廃品を用いたスクラプチュアと名付けられたものを使い制作されています。

菅氏は1905年姫路市に生まれ198277歳でこの世を去るまで、多くの国を渡り、多様な物事に触れ、人間味溢れる作品を制作しました。

1つの作品に様々な画材を使うことでいくつもの可能性をもつ菅氏の作品。多方面に向けられた目線は、菅氏が生きた社会と時代への想像を掻き立ててくれます。

只今、菅氏の作品はヘリオスの回廊内をはじめ、分館「喜知屋」の蔵ギャラリーにも展示しております。国内外の熱烈なファンによって支えられたハイセンスでユニ-クな作品群は、訪れた人の心にやさしく語りかけてくれることと思います。是非実物と対面し、菅氏の世界観に触れてみてください。


作品名 風の子
作者名 菅創吉
制作年

1962(昭和37)

材質/技法

油彩・和紙

規格 115cm×79cm

『広報なんと2018年6月号』掲載

菅創吉は描く材料、モチーフ、かたちにとらわれないユニークで独創的な作品を描いています。1905年兵庫県姫路市に生まれた菅は、1963年に渡米して以来ロスアンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨークで制作と発表を重ねました。油彩や立体作品などを通して、その東洋性とユーモアあふれる表現で高い評価を得た20世紀を代表する作家の1人です。

作品≪風の子≫は、大きな頭部をもった二本脚の不思議な生き物がいます。大きく口を開け、頭にはよく見ると紙の凹凸で目があり、笑っているよう。口から生えている2本の線は、まるでこちらに向かって手を振っているようかのようにみえます。あなたはこの作品をどんな風に見て、何を感じましたか

現在アトリウムには菅作品6点や初夏を感じられる作品を展示しております。お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。


作品名 EARLY SPRING
作者名 菅創吉
制作年 1958(昭和33)年
材質/技法 油彩・和紙
規格 60cm×70cm

『広報なんと2017年2月号』掲載

菅創吉は、58歳で渡米しニューヨークを中心に旺盛な創作活動を行い、東洋と西洋、具象と抽象を自在に往来した 独創的な作品を数多く生み出しました。この「EARLY SPRING」は、渡米後の59歳頃の作品です。

可愛らしい少女の横顔が描かれた、菅作品の中でも特にポップな印象を受ける作品です。髪は金色っぽく、目は青み がかった灰色をしており、外国の少女のようです。タイトルの「EARLY SPRING」は早春、春先という意味で、少女は頭に赤いリボンを付けています。作品は落ち着いた色合いですが、この赤のアクセントに麗らかな春への期待が表れ ています。西洋的な雰囲気の中に、日本における「春」や、寒い冬に春を待ち望む日本人の心に通じるものが感じられます。数ある菅作品の中でも、特に東洋と西洋の二つの要素を併せ持った作品と言えるのではないでしょうか。


作品名 MONKEY
作者名 菅創吉
制作年 1971(昭和46)年
材質/技法 油絵
規格 -

『広報なんと2016年12月号』掲載

いよいよ12月末の開催となりました「生誕110周年菅創吉展-21世紀に生き続けるユーモアとメッセージ-」の展示作品から、今回のポスターデザインでもある「MONKEY」をご紹介いたします。 何色とも言い難い、味わい深い色合いと目を引く赤に2つの目が特徴的な作品です。タイトルの「MONKEY」は猿のことですが、一見どのあたりが猿なのか迷ってしまいます。しかし、よく見てみると赤い部分と愛らしい丸い目から、赤い顔のニホンザルの姿が見えてきませんか?菅氏の作品は、抽象的な中にも何となく心を惹かれる可愛らしさや見ている人を和ませる要素があり親しみやすい作品が多いのでしょう。

菅創吉展では、「MONKEY」をはじめ、寒い冬でも温かい気持ちになれるようなユーモアあふれる作品を展示しています。入場は無料ですので、是非お気軽に足をお運びください。


作品名 リンゴ
作者名 菅創吉
制作年

1963-1965(昭和38-40)

材質/技法 デッサン
規格 -

『広報なんと2016年10月号』掲載

8月号に引き続き、今12月に企画展を開催する菅創吉氏の作品をご紹介いたします。

「リンゴ」というタイトルのこの作品は、「菅創吉カット集」の1点です。菅氏は仕事として描いた挿絵も数多く残しています。

黒い背景の中に白いリンゴが浮かんでいる、非常にシンプルな作品です。しかし、背景の黒色は真っ黒ではなく、赤や青など他の色も混ざっているように見えるので柔らかい印象を受け、左側の空白も想像力をかき立てます。

そして何よりも、リンゴの色使いにとても意外性があります。白黒だと分かりづらいのですが、リンゴの色は白なのに葉の色はピンク色で表現されています。このピンク色がアクセントとなって、黒い背景にもかかわらず、可愛らしい雰囲気の作品となっています。この色使いから、ちょっとした作品でも目を引き付けようとする菅氏のこだわりが感じられます。

「生誕110周年菅創吉展-121世紀に生き続けるユーモアとメッセージ-」は、1222日から来年19日まで開催いたします。皆さまのご来場をお待ちしております。


作品名 BUS終点から海岸を望む
作者名 菅創吉
制作年

1968(昭和43)

材質/技法 デッサン
規格 -

『広報なんと2016年8月号』掲載

菅創吉氏の作品は、知的ユーモアにあふれ、見る者の想像力をかきたてる不思議な魅力を持っています。

この作品は、「メキシコ・中国デッサン集」の1点で、菅氏が1968年にメキシコを旅行した時に描いたスケッチです。空 白が多い分、見る者にさまざまな情景を想像させます。例えば、季節はいつか、時間帯はいつか、どんな天気かなど。左の半月型の建物や平らな屋根の建物からは、日本にはない異国の雰囲気が伝わってきます。また、街灯や電柱など何気ない街の無機物も曲線的に描いてあり、まるで生きているかのような愛らしさが感じられます。そして「BUs終点から海岸を望む」という 題名。海は描かれていませんが、この街並みの向こうに果てしない海が存在している様子が想像できます。終点のバス停の先にも、旅先で初めて出会う景色のような、見たことのない世界が広がっていることを予感させてくれる作品です。

12月には福野文化創造センターにて菅創吉生誕110周年記念展を開催いたします。ぜひ実際に作品をご覧いただき、菅氏の奥深い世界に触れてみてください。


作品名
作者名 菅創吉
制作年

1963-1965(昭和38-40)

材質/技法

紙・油彩

規格 19.2cm×14.5cm

『広報なんと2016年4月号』掲載

菅創吉の創造性豊かな作品は、ある時は本質を強く強調 した作品で表現し、見る人に感動を与え、ある時は知的なユーモアで人々を愉しませてくれます。どの作品も菅創吉自身が歩んできた人生での豊かな人間性が、作品を通して表れています。

本作品の題にも使用されている「颯」という漢字には風が吹くさま、風の音など、いくつもの意味があり、シンプルな作品はいろんな場面を見せてくれます。

本作品の真っ黒な背景に白色で描かれた様子は、小さな子どもを連想させます。また頂点に続く曲線の先の、緑色の スカーフ状のものがなびく様子から、風を表現しているように見えます。

黒と白の無彩色(白から灰を経て黒にいたる系列に属する色)の中に緑色のアクセントが入ることで、無機質に感じる雰囲気の中に落ち着いた印象を感じさせる作品です。


作品名 鬼の子
作者名 菅創吉
制作年

1979(昭和54)

材質/技法

布・木

規格 60cm×60cm×5cm

『広報なんと2015年8月号』掲載

抽象形態の中からふぅーっと微笑ましい人の顔が浮かび上がってきます。菅創吉の作品は見る人々を作品の前にた たずませ、心和ませるユーモアに満ちています。
本作品、「鬼の子」とは蓑虫(ミノムシ)の別名であり、鬼が生んだ子により哀れなりと枕草子にも季語として使われています。菅氏の作品は、彫刻も絵の様に絵も彫刻の様に、心に思うまま素材と向き合い表現して見せてくれます。
布と木を素材にした「鬼の子」は、コタツの天板の裏をキャンバスにして、上に黒のフェルトを張り、その中心に墨壷(すみつぼ)を設置。墨壷の穴が口を大きく開けた鬼の子に見せ、哀れさの中にどこか面白さがのぞく作品です。
姫路生まれの菅氏は、15歳で日本画を学んだ後、20歳で上京し独学で制作します。その頃、生活の糧として描いた挿絵や漫画でユーモアのセンスを養いました。
激動の戦中戦後を行き抜いた菅氏は、58歳を過ぎて単身渡米。滞在中には、絵画ばかりでなく、散歩の途中で拾っ た鉄くずや日用雑貨を組み合わせ、「スクラプチュア」と名付けたユニークな立体作品の制作も開始します。東洋人の詩的な感性とユーモアを兼ね備えた菅氏の芸術は、海外でも高い評価を得ました。


作品名 雪国
作者名 菅創吉
制作年

1976(昭和51)

材質/技法

洋画・油彩

規格 -

『広報なんと2014年3月号』掲載

抽象形態の中からふぅっと微笑ましい人の顔が浮かび上がってきます。菅創吉の描く絵画は見る人々を絵の前にた たずませ、心和ませるユーモアに満ちています。

親しい友人とばったり出逢った時のような、温もりのある対話が聞こえてきそうです。

姫路生まれの菅氏は、15歳で日本画を学んだ後、20歳で上京し、師や美術団体に属さず、独自の画境で制作します。

その頃、生活の糧として描いた挿絵や漫画は、ユーモアのセンスを養いました。

激動の戦中戦後を生き抜いた菅氏は、58歳を過ぎて単身渡米し、滞在中には絵画ばかりでなく、散歩の途中で拾った鉄くずや日用雑貨を組み合わせ、スクラプチュアと名付けたユニークな立体作品の制作も開始します。日本人の詩的な感性とユーモアを兼ね備えた菅氏の芸術は、海外でも高い評価を得ました。

今回、福野文化創造センターでは、313()23()に「収蔵品展シリーズ」として、菅創吉氏の作品17点を展示します。ユーモラスで心温まる感動をぜひ体験して下さい。


作品名 エイ
作者名 菅創吉
制作年

1977(昭和52)

材質/技法

布、ステンレス、鉄、木

規格

49.3cm ×45.5cm

『広報なんと2012年9月号』掲載

「魚」「エイ」は同じ時期に魚をテーマに制作された立体作品です。

菅創吉という天性のユーモアに溢れた芸術家の手にかかると、金属製のオブジェとも彫刻ともつかぬ、奇妙不可思議なものに変身してしまいます。

彫刻は英語でスカルプチュアと言いますが、菅氏の場合は、スクラップ(廃品)を使って彫刻を作るのでスクラップチュアとなります。この2点の作品も木工製品の断片、ストーブの扉金具、鉄材などを自在に使いモダンで重厚感のある作品です。私たちが日常生活の中で捨てた廃品たちが、菅氏の思いやりとユーモアそして風刺の精神によって別の新たな生命体に変身してしまいます。

このようなオブジェからも、作者のものたちへの深い愛情や優しさが感じ取られます。生涯無所属で活動し、独学で修業した菅創吉流の表現物なのです。

菅氏は1905年姫路市に生まれる、1930年に日本画の秋吉蘇月に師事、1963年に渡米しニューヨークに10年滞在する。東洋性とユーモアを兼ねた菅の芸術は海外で高い評価を得た。67歳で帰国した後も旺盛な制作を続けたが、198277歳で惜しくもこの世を去った。